以前は先端を行く若い世代のセクシャルなファッションのひとつ、といった意味あいで捉えられることが多く、まさか(いろんな意味でリタイアした)中高年には無縁と思われていたデリケートゾーンの脱毛。しかし最近の傾向で、40、50代以上でこの脱毛をする人が急増している。
「将来、自分が介護されるかもしれないことを想定して、デリケートゾーンのVIOを脱毛しておく“介護脱毛”の需要が増えています」
と話すのは、脱毛器の取り扱いサロンへの導入講習なども行う『TACHIAOI』の代表取締役・印東梓(いんとうあずさ)さん。
「近年、中高年の男性でもハイジニーナ脱毛をする方が増えています」
ハイジニーナとは、英語の「hygiene(ハイジーン)」=衛生から来た言葉で、VIOのデリケートゾーンを全て脱毛すること。この5年間でVIO脱毛する女性は5倍以上で、半数が介護脱毛を意識しているという。男性に関しては、脱毛サロンでVIO脱毛する人が約3割。内8割が全て脱毛するハイジニーナ(メンズ脱毛サロン『FOX』調べ)。介護脱毛を意識している人も徐々に増え、“介護脱毛”という言葉も浸透してきているようだ。
VIO脱毛をしていると、介護される時にも便や尿の処理がしやすく清潔に保てるという。50代以上になると親の介護も経験し、自分が介護される時に気持ちよく介護してもらいたい、と切実に感じる世代でもある。
医療従事者からの立場からも、「介護的にはアンダーヘアはないほうが楽でしょう」と言うのは、愛知医科大学医師・後藤礼司さん。
「剃毛も皮膚を傷付けるので、毛のないほうが楽なのは確かです。また、衛生面から見ても毛嚢炎(もうのうえん)などを防ぐ可能性があります。毛嚢炎(毛包炎)とは、ひとつの毛包に炎症が起きた状態のことです。毛包とは毛穴の奥の毛根を包んでいるところをさします。その毛包に主に細菌が感染することで炎症が起こります」(後藤さん)
介護現場経験のあるヘルパーもこう語る。
「介護する時の毛は本当に邪魔。毛があることで乾燥した便が絡みつき、ホットタオルで蒸らすか、陰部洗浄でふやかしてから洗浄するけど、毛が引っ張られて痛いし、取れないからこするしかないこともあります。オムツもすぐに交換してもらえないこともあるから、蒸れるし痒みが出てしまったり。介護の時間も無駄に長くなるし、介護される側は下半身丸出しの時間も長くなって辛いでしょう。たとえボケていても羞恥心は消えませんから」(サロン『Bonds with』スタッフ・平野裕子さん)
では、VIOの脱毛は白髪になってもできるのだろうか?
「以前は、白髪が目立たない50才くらいまでに脱毛するのがよいとされていましたが、今では白髪や金髪にも対応できる脱毛器もあり、幅広い年齢で使用可能となっています。実際に60代で施術を受ける方もいらっしゃいます。
これまでは、毛根のメラニンに反応する光照射が主流でしたが、“バルジ領域”(幹細胞の一種で毛を生成する細胞が存在する領域)に作用する光照射ができるようになりました。この方法だと、照射時の痛みの軽減、白髪になっても脱毛できるというメリットがあります」(前出・印東さん)
ちなみに、ヘルパー歴20年、自分がされたい介護を心がけて利用者さんと向き合ってきた前出・平野さんは、介護する中で心に決めた6つのことがあるという。
1)介護してくれる人に「ありがとう」と必ず伝える
2)自宅介護にこだわらない
3)入所する場所は自分で決めておく(子供やお嫁さんに決めさせない)
4)現金は自宅や身のまわりに置かない
5)自分の昔話は聞かれるまでしない
6)デリケートゾーンは脱毛しておく
少子高齢化に伴う介護の状況が問題視される中、2025年には国民の5人に1人が「75才以上の後期高齢者」になると予測されている。十分な介護を受けられないかもしれない中、介護をする側も受ける側もより快適になるよう、さまざまな選択肢が増えていくだろう。
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